フランスと英語

 日本人の多くが「フランス人は愛国心が強く、英語を話せる人もできる限りフランス語を使おうとする」という迷信を抱いていることはよく知られています。さすがに若者で妄信している人は少ないのでしょうが、フランスにおける英語の実態を見てきたかのように知っている日本人もほとんどいません。フランスは観光大国ですから、インバウンド産業に関わりのある人は皆英語を話せますし、仕事中は英語の使用が延々と続きます。とはいえ彼らも仕事を離れた時の日常会話はフランス語でこなします。日本人が海外旅行でフランスを訪れた際にコミュニケーションをとるフランス人は彼らですから、首肯できることでしょう。

 では観光産業とは無縁の一般フランス人が使う英語の実態はどうでしょうか。フランスでは小学校から英語を学ぶため、学歴や経歴が凡庸であっても、日常会話くらいは難なくできるのが一般的です。が、中には不得意な人も若干存在し、この点はどの国も同様です。但し英語で話しかけても返答されないことをもって、「あのフランス人は話せない」と断定するのは禁物です。フランスで教育される英語はいわゆるクイーンズイングリッシュで、日本で馴染みの深いアメリカ英語ではありません。フランス人が日本人の話す英語を聞いても、崩れた英語をさらに崩して話しているように聞こえるため、彼らを面前にした時はゆっくり丁寧に話すことが推奨されます。

 インテリ層のフランス人に限れば、事情はさらに複雑です。彼らは世界中を移動しているため、外国で英語を使う一方、自国ではフランス語を使うべきだという愛国心の強い人が多いのです。冒頭に言及したタイプのフランス人はこの層に多いのです。